こんなお便りをいただきました。
仕事の都合で、夏休みをとるのが例年より遅くなってしまいました。友だちとも家族とも予定が合わず、ぼっち休みです。一人で何かするのが久しぶり過ぎて、イメージがわきません。一人でも休みが楽しくなるような絵本を教えてください。
「一人が久しぶり過ぎて、イメージがわかない」!
というおことばに、私はこくこくうなずいてしまいました。
子どもが生まれてからは、「プライベート× 一人× 自由」という状況があまりなくて(あっても気持ちがパッと切り替わらず)、戸惑ってしまうことがあります。「後で楽なように、家事をしておきたい……」なんてことも頭をよぎったりしますしね。
でも、ふらふらーっとお出かけするのも、なかなかよいものですよ。
おすすめしたい絵本はこちらです― 『ねこはるすばん』。
『ねこはるすばん』町田尚子作、ほるぷ出版、2020 amazon
人間が出かけて行った後の、ねこが主人公です。
つまり、「ねこは、るすばん」なのですが、「とおもいきや、どこへいく?」と続きます。
えっ、ねこ、お留守番しないんですか⁉ そう、しません。それどころか、タンス(まるでナルニア国物語のように!)に入って…… 木の穴から「どこか」に到着。
二歩足ですっくと立って、大きくのびをして、「ヒゲのむくまま きのむくまま」、コーヒーショップやヘアサロン、それから本屋さんにも行きます。それから、それから……。
見開き2コマ、後ろ姿のねことこちらを向いたねこがセットで描かれる構成なのですが、美しい写実的な絵と、ねこの表情や行動とのギャップがたまらず、思わず笑ってしまいます。
そんなねこも、人間が戻るまでにはちゃーんとおうちに帰って、愛くるしくもすました顔で、玄関でお出迎えするのでした。
ねこ好きでなくても、間違いなく楽しめる絵本です。細かいところまでいろいろ描き込まれているので、そちらもぜひお楽しみに。ページを行ったり来たりしながら、きっと何度も読んでしまうと思います。
「ヒゲのむくまま きのむくまま」、ぜひ、「きょうというひ」とこの絵本を「まんきつ」なさってください!
にこっとポイント
- 人間が出かけている間の、ねこのお話です。美しく写実的な絵が印象的ですが、ねこの行動と表情はとてもかわいくて、そのギャップに思わず笑ってしまいます。
- のんびりしたお休みを過ごしたくなります。お疲れの方にもおすすめです。
(にこっと絵本 高橋真生)