たっちゃん ぼくが きらいなの てをつないでも たっちゃん いつも にげちゃう
遊びたいと思ったお友だち・たっちゃんは、なんだか「ぼく」と違うところがある……。

『たっちゃんぼくがきらいなの― たっちゃんは じへいしょう(自閉症)―』さとうとしなお著、みやもとただお絵、岩崎書店、1996 amazon
『たっちゃんぼくがきらいなの』は、そんな「ぼく」の疑問に答えながら、自閉症のお友だちについて理解を助けてくれる絵本です。
ぼくとたっちゃん、気持ちやタイミングが合わない理由は?
たっちゃんは、手を繋いでも逃げちゃうときもあれば、突然大きな声を出して自分の頭を叩くときもあります。不思議なことばをしゃべるときもあります。
たっちゃんのアンテナは脳の深いところにあって、それが何かの拍子でぎくしゃくしてしまいます。そんなとき、たっちゃんは自分の気持ちをまわりの人にうまく伝えられないのです。
まわりの人の心の電波がくっきり届かない。家族や友だちの気持ちがうまく受け取れない。わたしたちは、そう知ることで、相手が自分を嫌っているわけではないことを理解することができるのです。
自閉症や障害の特性は、本当に多様ですから、同じ自閉症であっても、この絵本のたっちゃんとは違う個性を持った子もいるはず。
そんなときに、気持ちやタイミングが合わない、相手の根底にある理由をこの絵本から知ることができます。
1ページ目に描かれた、お互いにさしのべた2本の手のうち片方が、薄い青い影のように重なって少しずれているようにも見えます。
その様子は、こちらの目に見えているたっちゃんと、その裏に隠されたたっちゃんの本当の想いを表しているようです。
「ぼく」という子ども目線で、たっちゃんについて考えながらこの絵本を読んでいくと、いつかその本当のたっちゃんの手を握ることができたらいいな、と思わされます。
どんなコミュニケーションも相手を理解することから始めるのだと、改めて気づかせてくれる1冊です。
にこっとポイント
- 障害をもつお友だちと出会ったとき、子どもがどのように感じているのか、子どもの視点から語っています。相手や障害を理解していくひとつのきっかけとして読める絵本です。
- 巻末には児童精神科医師、佐々木正美先生の解説が付いています。
(にこっと絵本 Haru)