つやつやした赤いりんご。それを食器棚に1年ほどしまっておいたら、どうなっていくのでしょう。
『りんご だんだん』小川忠博写真・文、あすなろ書房、2020 amazon
「りんご じーっと」見ていると、「りんご だんだん」様子が変わってきます。「しわしわ」になり、やがて「ぱんぱん」になってきて……。
みずみずしくおいしそうだったりんごが、時を経てだんだんと姿を変えていく346日の様子を、写真で追っていきます。
「りんご」というひとつの命が終わるときに
わたしたちは、物が腐り朽ちていく姿をじっくりと追うことは、あまりしませんね。
色が変わっていたり、熟しすぎて形が崩れてきたりすると、「もう食べられないな」「臭いがしてきたな」と、すぐ処理してしまいます。
この絵本で、写真でりんごを見守り続けると、つるつるとおいしそうだったりんごは、ある意味ショッキングな姿に変わっていきます。
色が変わり、形が崩れて、朽ちていき、それと同時に、私たちにとっての「食べる」目的からは外れます。
しかし、290日目、「にょろ」と何かがあらわれることで、わたしたちはあることに気づかされるのです。
わたしたちにとって「食べもの」だったりんごも、ひとつの命であり「生きもの」だった、ということに。
りんごの346日、その行き着く先はひとつの命の終わりであり、別の命の始まる場所だったのです。
にこっとポイント
- 1年近くかけて、じっくりとその姿を追った写真を通して、「りんご」が姿を変えていく様子を知ることができます。ひとつの命としてその姿を捉え、考える機会にもつながります。
- 著者、小川忠博さんの写真絵本シリーズ「はっこう(発酵)」もおすすめです。科学の一端に写真を通して触れられる、興味深い内容になっています。
(にこっと絵本 Haru)