やなぎの木が金色に輝く、秋の「やなぎむら」。虫たちは、季節の移ろいを感じながら、今日もせっせと暮らしています。

『きんいろあらし』カズコ・G・ストーン作・絵、福音館書店、1998 amazon
冬を前に、ちょうちょのモナック夫妻は南のあたたかい国へ旅立つ準備中。ありのセッセさん一家は、食べものを集めて大忙し。バッタのトビハネさんは元気いっぱいに跳ねまわっています。
そんなある日、赤とんぼのあかねさんが大急ぎで知らせにきます。「たいへん! きんいろあらしがくるわ!」。
それを聞いた虫たちは大あわてです。巣を結び直したり、葉っぱにしがみついたり……。やがて空はざわめき、風が舞い、葉っぱの嵐が村を包みます。
それはまるで、金色の風が踊るようです。
さらに、きんいろあらしが去ったあと、くものセカセカさんが池の中に落ちてしまい、セカセカさんを助けようと、みんなで奮闘したりもします。
秋の自然の力と、小さな虫たちの優しさが心に残る一冊です。
「あらし」という虫たちにとっての大事件は、まるで金色の風が村を包むような、美しいひとときでもあり、自然の中で生きる虫たちにとっての「脅威」が、読み手には「美しさ」として映ります。

秋の金色をそっと閉じこめたような、美しく心温まるこの絵本のページをめくるたびに、私たち人間がふだん見過ごしている、季節のうつろいや命の営みの尊さに気づかされます。
風にそよぐ音まで聞こえてきそうな、あたたかい色づかいも魅力。読み終えたあとには、秋の風を感じてみたくなるはずです。
にこっとポイント
- 自然の中でひたむきに生きる虫たちの営みを通して、脅威さえも美しく輝く瞬間として描き出した、秋の光と命のきらめきを感じる絵本です。
- やなぎむらのおはなしシリーズのうちの1作です。「サラダとまほうのおみせ」「ほたるホテル」「ふわふわふとん」と季節ごとにかわいらしい虫たちと自然いっぱいのお話を味わうことができます。
(にこっと絵本 Haru)









