『ふでばこのなかのキルル』松成真理子作、白泉社、2010 amazon
「キルル キルル」― 小さなへんてこな生きものに、「ぼく」は「キルル」という名前を付けました。
キルルは、おじいちゃんにもらった、わらで編んだ古い筆箱に入っています。キルルは不思議な生き物で、あくびの後で小さな火をふいたりします。竜なのかな?
おじいちゃんなら知っているかもしれないと尋ねますが、「とかげじゃろ」と一言。
ところがある日、おじいちゃんは思い出します。
おじいちゃんが若いとき、旅先で遭難して困り果てていたときに、満天の星空から流れ星のように落ちてきて、助けてくれた竜のことを。そして、長い月日の中で、竜のことをすっかり忘れてしまったことを。
「ゆるせよ りゅうよ」。涙ながらに話すおじいちゃん。
その涙が水晶みたいな丸い珠になって、キルルのうろこがキラキラと光り、赤い目はもっと赤く炎のように揺れ、背中から小さな羽が生えたのでした。
キルルは空に帰っていきます。
ぼくは思います。
50年たっても ぼくがキルルのことわすれませんように
100年たっても キルルがぼくのことわすれませんように
不思議な生きものとの出会いと別れ。やさしい色使いで柔らかい絵は、この不思議なお話にマッチして、なんともあたたかい気持ちにさせてくれます。
にこっとポイント
- 不思議な生きものとの出会いと別れを描いたお話です。やさしい色使いで柔らかい絵が、なんともあたたかい気持ちにさせてくれます。
- 2024年の干支は「辰」。新年のおはなし会にいかがでしょうか?
(にこっと絵本 森實摩利子)