「みずのなかに ぜりーのような たまごが。たまごのなかには くろい はんてん。さかなが やってきて ぱくっと たべた。でも 4つのたまごだけ ながれていった。」
『ゆかいなかえる』ジュリエット・キープス文・絵、石井桃子訳、福音館書店、1964 amazon
難を逃れ、卵からかえった4匹のかえるたち。泳ぎの競争をしたり、かたつむりの隠しっこをしたり、ゆかいな毎日を送っています。『ゆかいなかえる』には、自然の厳しさの中でも楽しみながら生きていく、4ひきの1年間が描かれています。
明るくユーモラスなかえるたちの姿の裏には、厳しい自然
きょろりとした目、笑うようにぱくりと開いた口。この絵本のかえるたちはとても愛らしく、ユーモラスです。
でも、かえるたちの生活は、決して楽しいばかりではありません。卵であった兄弟たちは魚に食べられてしまい、自分たちもさぎやかめに狙われています。そして、もちろんかえるたちも、生きるために、とんぼのたまごを食べるのです。
ここには、弱肉強食の自然の生態の現実があります。
けれども、そんな過酷さをまったく感じさせないのがこの絵本の真髄です。
青と緑、白と黒のみで描かれたシンプルな色使いと、読んでいて心地いいリズミカルな文章。そして何よりも、躍動感のあるかえるたちの動きや楽しげな表情が、過酷な自然の中でも、ゆかいに生を謳歌しながら暮らす生きものの姿を、魅せてくれるのです。
生きる楽しさを感じながら生活していけたら、幸せ!
過酷な生存競争では、敵に襲われたり、仲間を失ったりすることもあります。でも、そんな危機さえも、むしろ遊びにかえて楽しんでしまうようなかえるたちの姿は、読んでいてなんだかほっとします。
学校、育児、仕事― 人間にも、それぞれに、様々な波や危機がありますよね。でも、そんな毎日をかえるたちのように楽しめたら……。きっと、心は満たされたものであるのではないでしょうか。大人にもじっくりと読んでほしい、梅雨にぴったりの1冊です。
にこっとポイント
- 梅雨の時期におすすめ!子どもも大好きなかえるたちの姿を通して、楽しく自然の営みを知ることができます。
- ピンチも楽しむかえるたちに、毎日を幸せに過ごすヒントをもらえます。
(にこっと絵本 Haru)