昨日は敬老の日でしたね。どんな一日をお過ごしでしたか?
さて、お正月やお盆、連休などで帰省した後、大好きなおじいちゃん・おばあちゃん(大人にとっては、大切なお父さん・お母さん)が、なんだか歳をとったみたいと、ふと心配になってしまった…… という声を聞くことがあります。
そんなときに、おすすめしたいのがこちら、『とっときのとっかえっこ』です。
『とっときのとっかえっこ』サリー・ウィットマン作、カレン・ガンダーシーマー絵、谷川俊太郎訳、童話館、1995 amazon
バーソロミューとネリーは、おとなり同士で大の仲良し。
といっても、バーソロミューはおじいさんで、ネリーはまだ赤ちゃんです。
バーソロミューは、ネリーをカートに乗せて、毎日散歩に出かけました。
やがてネリーが歩けるようになって、バーソロミューが杖をつくようになっても、さらにネリーが学校にあがって、バーソロミューがもっと歳をとっても、2人は「ハムエッグ」みたいにいつも一緒。
ある日、バーソロミューは出かけた先で転んでしまい、入院することになりました。
ネリーは毎日お手紙を書いて、バーソロミューを待ちます。
そして、やっとネリーの元へ帰ってきたとき、バーソロミューは車いすに乗っていたのです。
バーソロミューは言います。
これで さんぽは おしまいだな。
けれどもネリーは、まかせてとばかり胸をたたきます。
わたしが つれてってあげるもん。
そして、ネリーは、そのことばの通りにします。車いすを押して、でこぼこをこえて……。
そうっと やさしく ゆっくり。
そうです。ネリーは「やり方」をよく知っていたのです。
そっと見守ること。必要なときには手を貸すこと。あたたかな励まし。
それらはみんなみんな、バーソロミューが自分にしてくれたことです。
そして、それはネリーにとって、「とっかえっこみたいなもの」なのでした。
明るい色の施されたペン画は、表情や動きが生き生きしていて、見ているととても楽しくなります。細かな描写からは、文章にはない、二人のさまざまなエピソードが浮かび上がってきますよ。
読んでいるうちに、誰かと自分とのいろいろな思い出がよみがえってくるのではないでしょうか。
あんなこともあったな。
そうそう、このときは、こうだったっけ。
身体がほかほかしてきたら、もう大丈夫。一番大切なことの「やり方」は、あなたも、もう知っていますね。
にこっとポイント
- おじいさんと孫、というほど歳の離れた二人の間の、友情や信頼感に胸があたたかくなる物語です。
- 子どもから大人まで、幅広い年齢の人に喜ばれます。子育てや介護に携わる人、老いについてモヤモヤしている人などは、特におすすめです。
(にこっと絵本 高橋真生)