『いっぽんのせんとマヌエル ピクニックのひ』マリア・ホセ・フェラーダ文、パト・メナ 絵、星野由美訳、偕成社、2020 amazon
一本の線は、「まち」と「いなか」をつなぐ道。マヌエルくん家族は、車に乗ってピクニックに出発です。線をたどって、車は進みます。ピクニックでは、ヤギや馬などいろいろな動物に出会いますよ。
絵本製作のきっかけは、自閉症のマヌエルくん
『いっぽんのせんとマヌエル ピクニックのひ』は、『いっぽんのせんとマヌエル』(2017)の続編です。
それぞれで詳しい説明がなされていますが、『いっぽんのせんとマヌエル』は、著者であるマリアさんが、「線」が大好きな自閉症の男の子・マヌエルくんと出会ったことがきっかけで生まれました(続編は、日本のオリジナル刊行です)。
マヌエルくんは何かを見るとき、いつも線に注目し、いろいろなものに線を見つけることで、自分の世界を形作っているのだそうです。
『いっぽんのせんとマヌエル ピクニックのひ』でも、絵本の地面には、水色のはっきりとした線が一本、引かれています。この太い線は、車が走る道路になったり、鳥がとまる電線になったり、おはなしの最後までずっと続きます。
線は直線だけではありません。たとえば、うさぎの耳をなでる場面では、毛のふわふわした感じが伝わるように、くるくるの線になったりもします。
そのため、ページごとに変化する線を指でたどりながら読むと、おはなしをより捉えやすくなります。
さらに注目したいのが、ピクトグラムについて。ピクトグラムとは、「単語の意味をシンプルなわかりやすい絵で表現した、目で見ることば」です。
絵本の解説によると、「おかあさんが本につけたピクトグラムを見ることで、マヌエルくんは、本に書いてあることがよくわかるようになったから」だそう。
たとえば先ほどのうさぎの耳をなでる場面では、「うさぎ」「なでる」「ふわふわ」という3つの単語の絵文字が、2cmの小さな真四角の枠の中に、それぞれ描かれています。イラストと同じ人がかいたものなので、自然です。
ピクトグラムがあることで、文を読んで理解するのが苦手な子どもでも、絵本を楽しめるのです。
また、縦16cm×横20cmと小さめの絵本なので、おでかけ絵本としてもおすすめです。見返しと裏見返しのアリの行列は、隊列や運んでいるものに違いがあるので、ぜひ楽しんで見つけてみてください。
にこっとポイント
- 家族でピクニックに行くマヌエルくんの1本の線が基調となっているおはなし。ピクトグラムが特徴です。
- 特別支援学級でマヌエルくんの絵本を読んだ、多勢千夏さんの記事です。→ 特別支援学級の現場から〜道しるべにピクトグラムを!
- マヌエルくんのお父さんが、自閉症者の理解と普及啓発活動のために作った、『いっぽんのせんとマヌエル』ソングです。→ セソ・ドゥラン― いっぽんのせん
(にこっと絵本 SATO)