大ニュース ロンドン会議終わる
会議はしっぱい やりなおしと決定
場所はまださだまらない
という一文から始まるこの絵本『どうぶつ会議』は、字が多いので、絵本ではなくて挿絵の多い童話と言えるかもしれません。
『どうぶつ会議』エーリッヒ・ケストナー文、ヴァルター・トリアー絵、光吉夏弥訳、岩波書店、1954 amazon
第二次世界大戦後、世界平和のために国際会議が開かれますが、少しも成果があがりません。
子どもたちのために何とかしなくては!
人間たちが、戦争や革命やストライキなどを起こすから、子どもたちが巻き込まれてかわいそう……と話すのは、北アフリカの湖のほとりの、ライオン、象、きりんでした。
そこで思いついたのがどうぶつ会議でした。
人間たちの会議が、なんのやくにもたたないのは、会議のせいではない、人間たちのせいだ。
よくきけ! 一ヶ月後のきょう、どうぶつ会館でどうぶつ会議をひらくことにする。
世界じゅうのすべての種類の動物に、代表をおくるように、さっそく、つたえてくれたまえ。
陸の生きものも海の生きものも、鳥も昆虫も手伝って、地球上のすべての動物に、その趣旨が伝えられます。
そうして、どうぶつ会館に、世界各国から動物が集まり、どうぶつ会議の始まりです!
この会議は、紆余曲折を経て、動物たちが勝利します。
お話は、すべての動物の特徴や特技が自在に加えられて、ダイナミックに展開していきます。動物たちの絵も、いきいきとしてとてもかわいらしい上、最後にはウフッとするオチ…… ユーモアで締めくくっています。
『どうぶつ会議』は、日本では1954年に出版されました。原本は1949年のようです。第二次世界大戦が終わって少ししか経っていませんが、作者ケストナーの視点は世界の平和、子どもの幸せに向けられていたことがわかります(特に、政治家・国家の長である人たち、襟を正して読んでみませんか?)
ロシアとウクライナをはじめ、あちらこちらで戦争やクーデターによって亡くなる命の多いこと。心が痛む毎日です。1日も早く終ることを願います。
にこっとポイント
- 世界のあちこちで戦争や内乱が起きている今こそ、大人も読んでほしい絵本です。
- 本文の中に、ミッキーマウスやババール他も登場します。探すのも楽しいです。
- 東京都立川市のPLAY! MUSEUMで「どうぶつ会議展」が開催されています(2022年2月5日から4月10日まで)。公式サイトで、雰囲気が楽しめますので、ぜひどうぞ!
(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)