保育士を目指す学生さんから、「保育士として知っておきたい絵本を紹介してほしい」というリクエストをいただきました。
オンライン授業が多く、少しでも自分で学びを進めておきたいという前向きな気持ちにお応えするのは、絵本専門士で、保育者養成校の講師でもある、鴫原晶子さんです。
年度末の子どもたちの様子
まもなく年度末ですね。
皆さんも、子どもたちも、卒業・進級の時となります。期待に胸をふくらませて、今はどんな気持ちですか?
子どもたちは、大きくなることをとても喜んでいます。年長さんはもうすぐ小学生に、年中さんは年長組に、年少さんは年中組に進級します。
身体だけではなく、心も大きくなっている子どもたちと、春を迎える絵本を楽しんでみませんか。
保育士を目指す学生さんが読んでおきたい春の絵本・5選!
1.『はなをくんくん』
『はなをくんくん』ルース・クラウス文、マーク・シーモント絵、きじまはじめ訳、福音館書店、1967 amazon
雪が積もっている土の下では、いろいろな動物たちが眠っています。身体を寄せ合い、まあるくなって。木の中で眠っている動物もいます。
やがて目を覚まし、鼻をくんくんさせながら、動物たちは何かに向かってかけ始めます。
くま、かたつむり、りす、やまねずみ。みんな、鼻をくんくんさせながらかけていきます。そして、彼らが見つけたものは?
動物たちと一緒に微笑みたくなる絵本です。
2.『みんながおしえてくれました』
『みんながおしえてくれました』五味太郎作・絵、絵本館、1983 amazon
成長するにつれて、子どもたちは、いろいろなことができるようになります。
あるきかたは誰が教えてくれたのでしょうか。きもちのいいおさんぽのしかたは? おなかのひえないひるねのしかたは?
間もなく入学式を控えている年長組の子どもたちは、しぃ〜んとして見ていました。一人ひとりが、小学校への期待を膨らませていたのだと思います。
3.『ぽとんぽとんはなんのおと』
『ぽとんぽとんはなんのおと』神沢利子さく、平山英三え、福音館書店、1985 amazon
冬眠中の熊の子どもたちが、外から聞こえてくる音や匂いに気づきはじめます。「あれはなんのおと?」とかあさん熊に尋ねると、母さん熊は優しく答えてこぐまたちを安心させ、「まだ寝ていなさいね」と言います。
春を待つ熊の親子の微笑ましい姿と、やがてやってくる春が、新たな希望をもたらしてくれます。
4.『わたしとあそんで』
『わたしとあそんで』マリー・ホール・エッツ作、よだじゅんいち訳、福音館書店、1968 amazon
あたたかな日、一人で野原に出かけた女の子が動物たちに「わたしとあそびましょ」と声をかけますが、どの動物も逃げてしまいます。
でも、女の子が池のほとりで黙って座っていると、さっき声をかけた動物たちが少しずつもどってきます。
嬉しくてたまらない女の子の気持ちが、伝わってきますよ。
5.『根っこのこどもたち目をさます』
『根っこのこどもたち目をさます』ヘレン・ディーン・フィッシュぶん、ジュビレ・フォン・オルファースえ、いしいももこやく・へん、童話館出版、2003 amazon
寒い冬の間、土の下で眠っている根っこのこどもたちを、土のお母さんが起こして行きます。女の子は春に着る服を縫いはじめ、男の子たちも春の準備をはじめます。
そうしてしっかり準備が整った時に、春がやってきました。たくさんの花や虫たちと春を楽しむ子どもたち……。
同じ作者・別の訳者による『ねっこぼっこ』(平凡社)もあります。読み比べるのも楽しいものです。ドイツでの初版は1906年です。
なお、この絵本に描かれてい子どもたちの姿は「ブルーメンキント(Blumen Kind)」として、ドイツのエルツゲビルゲ地方の名産品として販売されています。
(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)