壊れた町に住む男の子と女の子が、山の上の大きな石の上にいるという「はっぴぃさん」に、願い事を聞いてもらおうと出かけます。
『はっぴぃさん』荒井良二作、偕成社、2003 amazon
男の子は、なんでものろのろ。
女の子は、なんでもあわてる。
タイプが正反対の二人が、それぞれの願いを持って、山を登っていくのでした。
のろのろ登る男の子。どんどん登る女の子。お互いを意識しながら登っていくと、「はっぴぃさんのおおきないし」に、たどり着きます。
同時に叫んだ二人は、ここで初めて、同じ目的で山を登ってきたのだということに気づくのでした。
石の上で待ちますが、はっぴぃさんはやってきません。
結局、最後まではっぴぃさんはがやってくることはなかったのだけれど、違う個性をもつ二人が交流することで、二人ははっぴぃさんに会えたような気持ちになったのでした。
しあわせは いつも自分のこころがきめる (相田みつを) ― この絵本を読んで、このことばを思い出しました。
幸せかどうかの価値観は、自分の思い込みで生まれているということ。
きっと、はっぴぃかどうかは、自分で決めることなんだな、と思いました。
にこっとポイント
- はっぴぃさんに願いをかなえてもらうため、正反対のタイプの二人が、それぞれ山を登っていきます。
- 黄色の表紙をめくると、銀色の見返し。そこには、戦争中なのでしょうか、戦車や破壊されたかのような街並みが描かれています。平和の象徴でもあるハトが描かれた表紙と、見返しのギャップ。作者が本当に伝えたいことが、ここにあるような気がします。
(にこっと絵本 森實摩利子)