今日、あなたは空を見上げましたか。空は遠かったですか。近かったですか。
『最初の質問』は、このような問いかけからはじまります。題名の通り、「質問」によって詩が紡がれていくのです。
『最初の質問』長田弘詩、いせひでこ絵、講談社、2013 amazon
出版社のHPによると、本作は、詩人・長田弘さんの代表作であり、中学3年生の国語の教科書(学校図書)にも掲載されている「最初の質問」を、絵本作家いせひでこさんが絵本として構成したものだそうです。
ひとつひとつの問いかけに込められた思いが、いせひでこさんならではの美しい情景に昇華され、読む人の世界を広げてくれる、珠玉の絵本です。
自分を深めると、世界も輝きだす
雲の美しさ、雨の滴をいっぱいに溜めたクモの巣、大きく枝を広げた樹木。最近、じっくりと見たのはいつのことでしょうか。
わたしたちは、絵本の中のいくつもの問いかけに応じて、川、砂、草、花― 身のまわりに溢れている豊かさに、改めて目を向けることになります。
「うつくしい」と、あなたがためらわず言えるものは何ですか。
この絵本を読んでから改めてまわりを見ると、その景色ががらりと変わります。何て美しいんだろう。もっと知りたい。視界が急に広がるような感覚さえあります。
問いと答えと、いまあなたにとって必要なのはどっちですか。
また、たくさんの問いかけが、今まで通り過ぎてしまっていたものに向き合わせてくれるのです。
絵本を読む、そのとき・その場所によって、心を揺さぶる問いかけは違ってくるはずです。そしてそれがこの絵本の真髄なのかもしれません。揺さぶられてまっさらになった心に、この絵本の成分が染みわたっていくのは、とても心地よいものです。
自分の中に潜り、経験や思いを掘り下げていくと、忙しい日々の中で、上澄みだけを味わい、浅くしか物を感じずに生きてきたことにはっと気づかされる…… そんな清涼感のある絵本体験ができると思います。
『最初の質問』は、深く深く息をすることを思い出させてくれる、そんな素敵な絵本です。
にこっとポイント
- 人生の節目や、一度自分を見つめ直したいときに読むと、「本当の自分」「それを取り巻くまわり」に出会えるはず。大切な誰かへの贈り物にもおすすめです。
- いせひでこさんがよくモチーフに描かれる、大きく枝を広げた樹木や、ゴッホを思わせるひまわりの情景は必見です。ただの挿絵ではない、いせひでこさんワールドに昇華された「最初の質問」を堪能できます。
- 詩と絵が見事に融合した絵本です。長田弘さんといせひでこさんのタッグ絵本は、『幼い子は微笑む』もおすすめです。
(にこっと絵本 Haru)