ハリネズミ警察署に、一通の手紙が届きました。
つぎの まんげつの よる、きんの かんむりを いただくぜ。
差出人(?)は、「カメレオンどろぼう・ドロン」、世界中の宝を盗む、世界一の大泥棒です。
『カメレオンどろぼう・ドロン』苅田澄子作、伊藤夏紀絵、あかね書房、2020 amazon
予告通りパリの美術館にしのびこみ、体の色を変えながら金のかんむりまでたどり着いたドロンですが、あと一歩というところで、惜しくもハリネズミ警察隊に捕まってしまいます。とはいえ、もちろんあきらめることなく、牢屋を抜け出し美術館へ。
はたして、そこでドロンが見たものは? 衝撃の結末は⁉
にぎやかで楽しくて、元気になる。
私がまずびっくりしたのは、泥棒はカメレオン、警察はハリネズミという意外性のある組み合わせ。なのに舞台が架空の世界ではなく、華やかなパリということに、また驚かされました。
そんなことは気にも留めない子どもたちは、ドロンの一挙手一投足に大盛り上がり。スマートなようでいて、ややこってりした印象があるのは、カメレオンならではのギョロ目や「ぴゅるるる~ ぺたり」と動く舌のせいでしょうか。
「ドロンさまを なめちゃこまるぜ」なんてセリフは、日常生活でも飛び出しそうですね。
明るい色彩でぎゅっと細かい部分までつめこんだ絵も、ドロンの濃いキャラクターにピッタリ(しかも、どことなくおしゃれです)。そこここに隠れたドロンを探しながら読むのも楽しいですよ。
また、警察隊の激辛カレーやコロコロ攻撃によるピンチも、まさかの展開も、広い横長の形を活かした構図も、スピード感があって、物語を一気に駆け抜けるよう。全力でドキドキワクワクできます。
もしちょっと落ち込んだときには、この絵本を声に出して読んでみましょう。「このままでは おわらんぞ」は、特に本気で! 気持ちよく笑って、「あー、おもしろかった」と幸せな気分で絵本を閉じられると思います。
そのときには、 何があってもへこたれず、華麗に変化し続けるカメレオンのドロンを、もっと好きになっているかもしれませんね。
にこっとポイント
- 子どもたちの大好きな「どろぼう」、けれど珍しいカメレオンが主人公の、とことん楽しい絵本です。
- テンポのよい物語ですが、ドロンの家や、美術館、金銀財宝などは後から戻ってでも見たいほど、細かくてきれいに描かれています。
(にこっと絵本 高橋真生)