「おおきな木には キジムナーが すんでいるんだよ」おばあちゃんは、さっちゃんに、よくこんな話をしていました。

てっぽうをもったキジムナー  『てっぽうをもったキジムナー』田島征彦作、童心社、1996  amazon

「キジムナーは、よるになると 木のなかから でてきて、しまのまわりを とびまわっているよ。さっちゃんのことも 見まもってくれるさあ」

てっぽうをもったキジムナー

 

ある日、突然、爆撃機がたくさん飛んできて、爆弾をおとしていきました。その後、軍艦がきて、島の形が変わるほど、爆弾を撃ち込んできました。さっちゃんはおばあちゃんと逃げますが、おばあちゃんに爆弾が直撃してしまいます。

さっちゃんは、いくつもの死体の間で、何日も隠れていました。このまま死ぬのかと思いましたが、ふと気づくと、さっちゃんは、大きな木の中で、ヒゲだらけの「生きもの」に助けられていました。さっちゃんは、「あっ、キジムナーだ」とつぶやきます。

しばらく木の中での生活が続きます。そんなある日、具合の悪いさっちゃんのために、キジムナーは、栄養のある食べものを探しにいこうと、鉄砲をもって木から降りていきました。

すると鉄砲の音、続いてダダダダと機関銃の音が聞こえて……。

さっちゃんとキジムナーは、どうなったのでしょうか?

続く後半は、さっちゃんの村や他の村民の土地に、アメリカ軍基地がつくられ、長い間、沖縄の人々に負担をかけていることを描写していきます。

てっぽうをもったキジムナー

 

そして最後は、次のような文で閉じられます。「てっぽうをもった人は、てっぽうに たおされるのさあ。おおきなきちのある おきなわが、また おおきなせんそうに まきこまなければ よいがね」

てっぽうをもったキジムナー

『てっぽうをもったキジムナー』には、戦時中から戦後の沖縄の状況が、見事な染色技法の絵で描かれています。また、人々を守るという伝説の妖怪「キジムナー」の話を取り入れていることで、読みやすく、心にズシンと響く作品となっています。

そして、この絵本の注目したいところは、アメリカ兵を一方的に悪にしていないところです。アメリカ兵の立場も考慮していることがうかがえます。

なぜ、平和な島「沖縄」が、このような目にあわなければいけなかったのか。ぜひ、ご家族で読んでいただき、その後のさっちゃんとキジムナーの運命を見届けてください。

 

にこっとポイント

  • 子どもから大人まで、日本人なら一度は読んでおいてほしい一冊です。
  • 染色技法の絵に魂が入っていて、読者を物語に引き込んでいきます。
  • 沖縄の基地問題の成り立ちがよくわかる絵本です。

沖縄の平和学習施設

 

(寄稿:絵本専門士<神奈川県>えほん・とんとんみーず 百名朝彦)

 

 

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