古いアパートの管理人マクドナルドさんは、働き者。アパートをいつも居心地よくしています。
『マクドナルドさんのやさいアパート』ジュディ・バレット文、ロン・バレット画、ふしみみさお訳、朔北社、2009 amazon
けれど、住んでいるお部屋は1階の薄暗いすみっこで、部屋には光が差しません。おくさんが大事にしていたトマトの苗も、とうとうしおれてしまいました。
そこでマクドナルドさんは、窓の前の生け垣を取り払います。
元気になったトマトに気をよくしたマクドナルドさんは、いろいろな野菜を育て始めます。ついには牛まで飼うのですが、反面、住人たちは怒って次々と引っ越していきます。でも、マクドナルドさんはへっちゃら。アパートはいつの間にか農場になっていました。
そんな順風満帆な(?)マクドナルドさんが迎える最大のピンチは、アパートの持ち主にこのできごとがばれてしまったこと。すでに人間よりも野菜が好きになっていたマクドナルドさん、どうなる!?
マクドナルドさんの野菜と同じ!? いろいろと味わえる絵本
マクドナルドさんはいつだって一生懸命。
「やさいって ホントに かわいいな!」
今日もうっとりキャベツを見つめます。
そんなマクドナルドさんの姿を描く絵は、ちょっととぼけていて、どこかおしゃれ。ペンで描かれているのですが、野菜だけが色を施されていて、それがまわりを照らすようにほんのり明るくあたたかく、美しいのです。部屋の中なども細かく描かれていて、隅々までおかしみがあります。
また、どんどんエスカレートしていくマクドナルドさんの野菜愛には、子どもも大人もびっくりで、笑ったり顔を見合わせたり、ちょっぴりあきれてため息をついたり…… でも、なんとなく楽しくて、ドキドキすることが多いのではないでしょうか。
とはいえ私は、こんな風にも思うのです。
マクドナルドさんは、真面目で働き者だからこそ「普通」を軽々と飛び越えてしまったのかもしれない、と。そして、その「普通ではないこと」の受け入れ方も、本当にそれぞれなのだ、と。
ただのナンセンスではない、ピリッと辛口な味わいに、うならずにはいられません。
子どもたちも大好きな絵本ですが、もしかしたらはまってしまうのは大人の方かもしれません。
にこっとポイント
- たっぷり楽しめるユーモアにピリッとした味わいがあって、小学生から大人まで幅広い世代におすすめしたい絵本です。
- モノクロームのペン画に野菜だけが色をつけられているのが美しく、印象に残ります。
- 小学生(大人数)への読み聞かせにもよく使われますが、細かいところにも遊びがあるので、手に取ってみるようぜひすすめてみてください。
(にこっと絵本 髙橋真生)