家族が集まる「こたつ」を定点観測したかのような絵本、『こたつ』。
『こたつ』麻生知子作、福音館書店、2020 amazon
わたしは、この絵本を読んで、泣きたくなるような気持になりました。これは、まさに、わたしが子どもの頃、祖父母の家で繰り広げられていた風景だったのです。
こたつの上には、みかんの入ったかごが置かれ、年末大売り出しのちらしが無造作に並べられています。
子どもたちは、こたつのまわりをおもちゃの線路で囲ってみたり、中に潜って冒険するような気持ちを味わったり、はたまたちらしで折り紙をしたり。
大人を手伝ってお節の仕込みをしたり、年賀状を書いている様子を眺めたり。そこは、生活の中心で、家族の集まる場所です。
親戚が集まれば、大人用、子どもたち用の机を継ぎ足して、大人たちはお酒を酌み交わし、子どもたちは豪華なご飯にお菓子に大喜び。
ここ数年のコロナ下では、大人数が集まるこの風景は、あまり見られないものになってしまったのかもしれません。
天井からの定点カメラのような構図のため、人々の表情は見えません。それでも、そこに集まる人たちが笑顔に溢れ、リラックスして過ごしていることがよく伝わってきます。その年を労い、次の年を迎える喜びをともに分かつ幸せ。
この絵本を通して、ぽかぽかと、体も心もあたたかくなってくるはずです。
にこっとポイント
- こたつに焦点を当てて、同じ位置からこたつを見下ろす形で、師走の様子が描かれていきます。心も体も、温かくなるような、共感ポイントあふれるこたつの絵本です。
- 家族一人一人のセリフを通して、その様子を描いているところも特徴です。子どものセリフ、お父さんお母さ、おばあちゃんのセリフなど、それぞれ役割分けをして読んでみても面白いですね。
(にこっと絵本 Haru)