月曜日の朝、ダニエルは、行きつけの公園で、次の日曜日に詩の発表会が行われることを知りました。
でも、「詩って なんだろう?」
『詩ってなあに?』ミーシャ・アーチャー作、石津ちひろ訳、BL出版、2017 amazon
「詩ってなあに?」と子どもに聞かれて、ドキッとしたことがある方、いらっしゃいませんか?
たとえば、『例解学習国語辞典』(小学館・第十版)の【詩】には、「心に深く感じたことを、ある調子や形式で表した文学」と書かれています。
これはもちろん、辞書として適切な説明ではあるのですが、わかるようなわからないような、どこか「ふーん」という感じも漂います。どうしましょうか?
さて、首をかしげるダニエルに、答えてくれたのはクモでした。
詩っていうのはね、あさつゆの きらめき のことなの
そうしてダニエルは、火曜日には木の上のハイイロリスに、水曜日には穴の中にいるシマリスに、というように、いろいろな生きものに「詩ってなあに?」と問いかけます。
おちばの かさこそと なる おと が、詩だと おもうよ
たぶん、おひさまで あたためられた すな のことじゃないかしら
日曜日、ダニエルはみんなに教えてもらった詩を素直に発表しました。そして、その帰り道に、自分の「詩」も発見するのでした。
何事も出会いは肝心。
私は、この絵本でなら初めて詩と出会った子に、詩って、なんて美しいものなんだろうと感じてもらえると思っています。
ちなみにこの絵本は、絵もとても魅力的なのです。油絵とコラージュの組み合わせから生まれる不思議な立体感に、目を奪われるような構図。深みがあって、鮮やかな色。大胆なのに繊細で、きっと、それぞれにお気に入りのページが見つかるでしょう。
小学校のみならず、中学校でも高校でも、詩・短歌・俳句はさらーっと流しておしまい(だった)、ということをよく聞きます。特に最近は休校の影響で十分な授業時間を取れないこともあるようです。そんなときに、こういった絵本を読むだけでも、詩へのイメージはだいぶ変わるでしょうし、きっと親しみも湧きますね。
また、私は『詩ってなあに?』を、子どもだけではなく、中学生や高校生、大人にも手渡していきたいと思います。みずみずしくのびやかな答えの数々に、周りを見る目も変わるはず。そして、「こころが すみわたっていくような」体験をしてもらえるはずです。
もしこの絵本を読んで、あなたの詩が見つかったら、こっそり聞かせてくださいね。
にこっとポイント
- 「詩ってなんだろう」と疑問に思ったときに読むと、理屈ではなく、詩の美しさをたっぷりと味わうことで、その答えが見えてくると思います。
- 子どもだけでなく、大人にもおすすめです。そばにおいて、時々見返したくなるような、心にみずみずしさとのびやかさを取り戻せるような、絵本です。
(にこっと絵本 高橋真生)