みんなのおしゃべりには加わらず、でも自分の世界がありそうで、「ちょっと変わっている」「でも、なんか気になる」と思われているような人が、あなたの周りにはいませんか?
揶揄されることもあれば、憧れられることもある……。独特の存在感のある、そんな人です。
今回ご紹介する絵本『ちいさなハチドリのちいさないってき』のハチドリも、そんなふうでした。
『ちいさなハチドリのちいさないってき』ウノサワケイスケさいわ・え、はしづめちよこきかく、イマジネイション・プラス、2022 amazon
森の動物たちの楽しみは、自分のすごいところを自慢すること。強いこと、速いこと、美しいこと、そのほかいろいろです。
そんな中で、何も自慢しないのがハチドリでした。ハチドリは、いつも一人、細いくちばしで、花の蜜を吸っています。
どこか気になる存在であるハチドリに、だれも声をかけることはありませんでしたが、あるとき、ハチドリはみんなの注目を集めることになります。
それは、森の一番高い木に、カミナリが落ちたとき。
動物たちは、大きな川のほとりに避難しました。
そこで目にしたのが、火を消すために、一滴の水を落とし続けるハチドリの姿だったのです。
始めはばかにしたようにハチドリを眺めていた動物たちは、ハチドリのことばにはっとし、行動を起こします。
ぼくは いま じぶんが できることを しているのさ
さて、この絵本は、実は南アフリカ、中南米アンデス地方の昔話を元にしています。今も、そしてどの国の人にも通じるメッセージに、驚かされますね。
華やかで美しい絵は、どのページも強く印象に残ります。読みながら、絵本の中の森に入っていくというよりは、絵本の外にハチドリたちの住む世界が広がってくるようなイメージがあるのは、鮮やかな色とたっぷりとした光によるものでしょうか。
私は、その国らしさが感じられる絵の昔話絵本がとても好きなのですが、絵本になじみのない方には、こういった絵は手に取りやすいと思います。
なんとなくモヤモヤしているとき、どちらへ進めばいいのか迷ったとき、自分には何もできないと打ちひしがれてしまったとき、読んでいただきたい絵本です。プレゼントにも、おすすめです。
にこっとポイント
- ちょっと変わっている、みんなの「気になる」存在だったハチドリは、火事をきっかけに、周りを変えていきます。なんとなくモヤモヤしているとき、どちらへ進めばいいのか迷ったとき、読んでいただきたい絵本です。
- 色鮮やかなグラフィックが印象的で、大人も手に取りやすい絵本です。著者のウノサワケイスケさんは、MoMAのクリスマスカードのデザインで知られています。
(にこっと絵本 高橋真生)