PICK UP! ハロウィンに読みたい絵本

ある真夏の日、男の子が、熱にうなされて寝ていました。ママは、看病している間にうたた寝してしまっています。ふと、枕元から聞こえる小さな声に、男の子が目を覚ますと……、なんと妖精たちがいたのでした。

真夜中のちいさなようせい

『真夜中のちいさなようせい』シン・ソンミ絵・文、清水知佐子訳、ポプラ社、2021 amazon

「しぃーっ!」「あたしたちが ママのかわりに かんびょうしてあげる」。そして、看病で疲れて寝入っているママを見て、「しばらく あわないうちに すっかりママらしくなって」と言うのでした。

ママが小さかった頃、いつも一緒に遊んだのだという妖精たち。目を覚ましたママも、思い出の花の指輪をきっかけに、それを思い出します。

『真夜中のちいさなようせい』は、韓国の絵本。妖精たちは、ミニチュアながら、綺麗に髪を結い、朝鮮の民族衣装であるチマチョゴリを着て、かわいらしい姿です。

私は、表紙に描かれた彼女たちを見るだけで、すぐに惹きつけられました。6人いる妖精たちそれぞれの、生き生きとした表情や動きがなんとも魅力的です。

なかでも、一人だけスカートの色が赤に描き分けられている一人の妖精にぜひ注目してみてください。

彼女は、先頭に立って子どもの頃のママと遊び、大人になったママと距離ができてしまったことを誰よりも悲しみ、また、思い出の花の指輪を男の子に手渡してもいます。そういった様子や、童心に戻ったママと、はにかみながら再会を果たす姿からは、二人の間に確かな絆があったことが感じられます。

大人になって、子どもを守る責任を負い、仕事に追われる中でも、童心に返り純粋に物事を楽しめることを、この絵本の妖精たちは思い出させてくれるようです。

にこっとポイント

  • 純粋な心を持つ子どもしか出会えないような、妖精たちとの交流に心があたたまります。どんな国、どんな人のところにも、妖精たちが現れてくれたら、なんて願いたくなるラストです。
  • 韓国の伝統的な衣装をまとった登場人物たちと、繊細な絵にうっとり見入ってしまいます。小さな妖精たちの細かな様子や、本文には出てこない猫との攻防も見所です。

(にこっと絵本 Haru)

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