PICK UP! 空のきれいな季節に……「飛ぶ」絵本

ロングセラー絵本『てぶくろ』は、元々、ウクライナの民話です。

寒い冬に、落ちていた手袋に動物たちが次々と集まり、手袋に「入れて」「いいよ」というやりとりをするお話は、くり返しの展開で子どもたちにもわかりやく、それでいて期待感を高めてくれます。

それでは、日本だけでなく世界でも人気の、このかわいらしいお話の絵本を読み比べてみましょう。

1. ラチョフ、内田莉莎子

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『てぶくろ』ウクライナ民話、エウゲーニー・M・ラチョフ絵、内田莉莎子訳、福音館書店、1965 amazon

日本のわたしたちにとって、一番なじみ深い『てぶくろ』ではないでしょうか。

登場動物は、「くいしんぼうねずみ」「ぴょんぴょんがえる」「はやあしうさぎ」「おしゃれぎつね」「きばもちいのしし」「のっそりぐま」。キャラクターがわかるネーミングに、動物たちの詳細なやりとりも思い浮かぶようです。

ラストは、犬の鳴き声に驚いて、動物たちが散り散りになっていく、といったものになっています。

2. ラチョフ絵、田中潔

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『てぶくろ』(ウクライナ民話 ラチョーフ・シリーズ1)、エウゲーニー・M・ラチョフ絵、田中潔訳、ネット武蔵野、2003 amazon

この絵本は、(1)のラチョフが、もう一度書き直して出版したものです。

シックな色使いだった前作から打って変わって、鮮やかな印象です。ウクライナの紋様も描かれていたり、セリフが増えていたりと、描写が細かくなっています。

3. たちもとみちこ

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『てぶくろ』ウクライナ民話、たちもとみちこ(cokobockle)、ブロンズ新社、2005 amazon

ぼうやが落とした手袋に、もぐら、きつね、うさぎ、はりねずみ、ふくろう、くままで集まります。

いろいろな画材で描いた柄をデジタルで取り込んで、コンピューターでコラージュするという手法で製作されている本作は、かわいらしく、ポップな絵が特徴です。

4. ジャン・ブレット、岡田好恵

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『ウクライナ民話 てぶくろ』ジャン・ブレット作、岡田好恵、岩崎書店、2023 amazon

少年ニッキは、おばあさんが編んでくれた灰色の手袋を落としてしまいます。そこへ集まってきたのは、もぐら、うさぎ、はりねずみ、ふくろう、あなぐま、きつね、くま、そして最後にねずみ。皆さんがよく知るラチョフ版とは違ったメンツの登場動物たちは、リアルなタッチで描かれていて、細部まで美しく見やすい絵です。

お話は、見開き中心の大きな画面と2つの手袋型の画面の3場面で展開しており、中心のお話(大きい画面)、手袋を探すニッキ(手袋型1)、次に登場する動物(手袋型2)と、同時進行で読めます。

また、ウクライナ刺繍の紋様や民族衣装が描かれていて、ウクライナの民話らしい美しい演出がなされています。

※1999年刊行の絵本を、判型を変えて復刊したものです。

にこっとポイント

  • 寒い冬に読むのにぴったりの『てぶくろ』を、語りや画風の違いを比べながら楽しむことができます。
  • ウクライナ民話として口語で伝わってきたお話を、いろいろな絵や展開で味わうことができます。お話はひとつではない。ひとつひとつの家庭、語りの場で同じお話でも味わい方、語り方が違うのだな、と感じることができます。

(にこっと絵本 Haru)

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