『1つぶのおこめ さんすうのむかしばなし』デミ作、さくまゆみこ訳、光村教育図書、2009 amazon
昔、インドのある地方に一人の王様がいました。王様は、毎年とれたお米のほとんどを召し上げて、米倉にしまいこんでしまいます。それなのに、飢饉の年が訪れ、貯えたお米を人々に分け与えるよう大臣たちが頼んでも、王様は聞き入れないのでした。
民が飢えているのに、自分だけは贅沢ざんまいをしている王様。そこで、村娘のラーニが知恵をしぼり、王様からお米を取り戻す方法を考えます。
ラーニはあることをし、その褒美にと、王様に要望を聞いてもらうことにしました。
それは、「1粒のお米をください」というもの。けれども、次の日はその倍の数を、また次の日はさらにその倍、と受け取るお米の数を増やしていく、というお願いです。
はじめは、ほんの少しと思っていたお米の数が、累乗で増えていった結果、15日を超えたくらいから数の増え方がぐんと大きくなります。それはもう、大人も驚いてしまうほどです。
絵本の最後のページに、お米がどんなふうに増えていったかが分かる表があるので、ぜひ見てみてほしいです。なんと、30日までには546,870,912粒までふくれあがりました。
そして、ラーニが最終的にもらった全てのお米は、10億を超えることになるのです。「1から倍にしていっただけで、こんなに大きな数になるなんて!」と、数のマジックに、大人も夢中になって盛り上がることができるお話です。
また、細密画風に描かれたオリエンタルな絵が特徴の本作。お米が増えていく過程では、孔雀や象、虎にサルにラクダなど、鮮やかで美しい動物たちも登場します。お米がだんだんと増えていき、2ページ両開きでゴールドの背景にずらりと米を背負った動物が並ぶ様子は、圧巻です。
インドの昔話としてハラハラしつつ、数のマジックにウキウキ笑い、美しい絵にうっとりする。どんな角度からも味わえる、おはなし会にもおすすめの1冊です。
にこっとポイント
- 1粒のお米も、倍にしていくととても多くなる…… ページを追うごとに、数の決まりを視覚的に感じることができます。
- インドの細密画風の異国情緒あふれる絵も、じっくりと眺めたくなる魅力があります。
(にこっと絵本 Haru)