とても美しい絵本です。葉っぱの上で、小さな氷になった露。公園の蛇口。洞窟や海。繊細で迫力のある写真に、子どもならずとも目を奪われます。
『ふゆとみずのまほう こおり』片平孝写真・文、ポプラ社、2019 amazon
『ふゆとみずのまほう こおり』は、科学絵本。身近なところから、寒さが厳しい山奥まで、いろいろなところで生まれる氷が紹介されています。
どうして氷ができるのか、どうしてこういう模様ができたのか、そういったことがていねいに説明されているので、とてもわかりやすいのですが、さらに、その文章が詩的なところもよいのです。
きしべには こおりの バームクーヘン。
うすく はった こおりに くうきが はいって、しろい もようが できた。
あるお母さんは、毎朝、幼稚園に行くのにぐずってしまうお子さんと、この絵本を読んだのだとか。そうしたら、「氷を探そう!」と大急ぎするようになったそうですよ。
比較的温暖な地域にお住まいですが、小さな小さな氷を探し当て、「きれいだね」「何に見える?」と話すのは、園までの道をただ前だけ見てぐんぐん進んでいたときとは違う、満ち足りたひと時なのだとか。いつか「氷のおしくらまんじゅう」や「ジュエリーアイス」を見に行きたいと話しているそうです。
私は、このお話を聞いて、なんだか胸が熱くなりました。
身のまわりの小さな不思議に気づき、それを楽しむ心を、お子さんに贈ることができたのだな、と。
お子さんは、きっとこれから、さまざまな自然の不思議に惹かれ、深く味わい、その奥深さにため息をつく、そんな幸せをたくさん感じられるでしょう。
毎日が同じことの繰り返し― 退屈な日々を送っていると感じている方にもぜひ読んでいただきたいです。
視点を外へ、ぐっと広げてくれる絵本です。
にこっとポイント
- さまざまな氷を、美しい写真と、わかりやすく詩的な文章で紹介した、科学絵本です。身の回りの自然の変化に気づく、きっかけを与えてくれます。
- 5・6歳のお子さんから楽しめますが、小学校高学年の読み聞かせでも好評。大人の方にもおすすめです。
- 巻末に、氷の性質についての解説が付いています。
(にこっと絵本 高橋真生)
<著者・片平孝さんの絵本>