『しんせつなともだち』方軼羣文、村山知義絵、君島久子訳、福音館書店、1965(月刊「こどものとも」発行)、1987(「こどものとも傑作集」第1刷) amazon
雪がたくさん降って、野も山もすっかりまっ白になりました。
食べものをさがしに出かけたこうさぎは、かぶをふたつ見つけます。そこで、ひとつだけを食べて、もうひとつはろばに持っていってあげることにしました。でも、ろばは留守だったので、こうさぎはかぶを置いて帰ります。
さて、こうさぎと同じく食べものを探しに出ていたろばが、戻ってきました。さつまいもを見つけていたろばは、かぶをこやぎに届けます。
こやぎはそのかぶをしかに届けて― と、かぶはあちこちをめぐります。かぶの行き着く先はどこだったのでしょうか?
同じ苦境にいる友だちへ、差し伸べる手
雪の積もる、寒い寒い冬。その日の食べものがなく、探しに出る動物たち。
やっとひとつを口にしたものの、明日は、また食べものがないかもしれない。それでも、この寒い雪の中、友だちはお腹を空かせているかもしれないと、手もとに残った食べものを、困っているだろう友だちへ― なんて、純粋で愛にあふれているのでしょう。
私たちには、こんなふうに、できるでしょうか。
つらく厳しい環境にいるときは、どうにかこの状況を脱したい、と視野は狭く気持ちは固くなってしまうようです。
でも、大切な人も同じように苦しんでいるかもしれない。そう、視野を広げて心を向けてみると、もっと私たちは自由になれるのかもしれません。
ひとりで戦わなくてもいいのですね。大切な誰かを支えながら、支えてもらいながら、乗り越えていけたら、もっとその道のりは豊かであたたかなものになるはずです。
ちなみに、かぶが自分のもとに戻ってきていることに気づいたこうさぎは、「ともだちが わざわざ もってきてくれたんだな」と、すぐに思い至るのです。素敵ですね。
自分が愛するように、誰かも自分を愛してくれている、そんな心の芯がしっかりしていれば、毎日を強く生きていけそうです。
大人にも子どもにもしみわたる優しさに溢れた絵本。この寒い冬に、おすすめです。
にこっとポイント
- 優しさの連鎖から、思いやりの心を知ることができます。
- 小さいお子さんにも大人にも、寒い冬に、おすすめです。
(にこっと絵本 Haru)