子どもは果物が大好き。うれしそうに果物をほおばる姿はなんとも愛らしいものです。今日は、とっても美味しそうな果物が描かれている絵本をご紹介します。
『くだもの』平山和子、福音館書店、1979 amazon
「りんご」「さあ どうぞ」― おいしそうな丸ごとの果物の絵の次には、皮がむいてあったり食べやすい形にカットされたりした果物の絵。「さあ、どうぞ」と差し出してくれます。思わず手を伸ばして食べたくなってしまいますが、フォークの向きが、子どもが持ちやすいように工夫されているなど、実は愛情がいっぱい溢れた作品なんです。
『くだもの』で世界がぱっと広がる瞬間
身の回りの物と、その名前が一致し始める1歳半頃から2歳の頃を、「命名期」と言います。物の名前が分かるようになり、実物とイラストが同じであることを理解できる時期でもあります。
私の読み聞かせの会によく来てくれていた女の子は、イチゴが好きで、この絵本のイチゴのページも大好きでした。「さあ、どうぞ」と声をかけると、小さな手のひらでイチゴをつまむまねをして、口に運ぶ― 読み聞かせのとき、そんなやりとりを楽しんでいました。
そして後日、家で、自分の食べようとしている本物のイチゴと、絵本のイチゴが同じであることに気づき、指をさしてママに一生懸命「同じだ!」ということを伝えてくれたとのこと。それは、子どもの世界がぱっとひろがった瞬間だった、とママは教えてくれました。
『くだもの』の絵が本物に近いからこそ、実物とマッチングしやすく、ことばの理解へと結びついていきます。ですから、かわいらしいイラストタッチの作品もたくさんありますが、こんなふうに本物に近い写実的なイラストの作品も、ぜひ読んであげてほしいと思います。
『くだもの』の最後に出てくる果物は、バナナ
この絵本の最後に出てくる果物は、バナナです。実は、バナナは「さあ どうぞ」では終わりません。
バナナはね、自分で皮をむくよう声をかけています。チャレンジできるところは子どもにやってもらう。上手にできた時の子どもの顔はとっても嬉しそう! こうしていろんなことに挑戦する姿を見守ってもらって、子どもは成長していくのですね。そういう大切なかかわり方も教えてくれる絵本です。
にこっとポイント
- 絵本を読みながら「さあ、どうぞ」とお子さんに絵本を差し出してあげてください。きっとお子さんは、おいしそうに食べるまねをしてくれることでしょう。ごっこ遊びを親子で楽しんで!
(にこっと絵本 森實摩利子)