『きつねのぱんとねこのぱん』小沢正作、長新太絵、世界文化社、2021 amazon
世界一おいしいパンを作りたい、という夢を持つ、きつねのパン屋がいました。
ところがある日、お星さまがやってきて、ねこのパンにはかなわないと言うのです。
これを聞いたきつねは、紳士に変装してねこのパン屋へ行きました。
ねこのパンを食べたきつねは「おたくのぱんも おいしいけど、 ねこのぱんやさんのぱんには かなわないようですねえ」と負け惜しみを言って立ち去りますが、心の中では、「ほんとうにねこのパンにはかなわない」と思っているのでした。
その後、同じようにねこもきつねのパン屋を訪れて、パンを食べ、ねこのパン屋にはかなわないと言いながら、「きつねのパンの方がおいしい」と思うのでした。
それぞれに悔しい思いをして、仕事が手につかないくらい泣き続けたのです。
そして、とうとう、ねこはパンたちの力を借りて、医者の診察を受けることになりました。
その結果、二匹は思いがけない場所で再会し、意気投合して「きつねこぱんてん」というお店を一緒にやることになったのです。
お星さまは前から二匹でパン屋をやってほしい、と思っていたのですね。お店は大繁盛のようです。
きつねとねこのとぼけた表情や悔しがっている表情が、おはなしに立体感を与えているように思います。
にこっとポイント
- 思わず笑ってしまうのに、落ち込む気持ちに共感できる、不思議で楽しい絵本です。
- 「きつねのぱんとねこのぱん」は、1973年に月刊雑誌「ワンダーブック」(2月号)に掲載され、その後何名かの画家が絵を手がけて出版されました。本書はその雑誌掲載版を単行本化したものです。
(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)