新学期です。正直に過ごしましょう、という目標を、誰よりも真っ直ぐに受け止めたのが、三年生の土居くんでした。

『タヌキの土居くん』富安陽子作、大島妙子絵、福音館書店、2022 amazon
次の日の朝、教室のドアをガラガラッと開けて入ってきたのは…… なんと、つぶらな瞳にふさふさの尻尾を持った、本物のタヌキ!
ボク、本当はタヌキなんです。校長先生が正直になれって言ったから、化けるのをやめました。
最初は腰を抜かすほど驚いた先生やクラスメイトたちも、土居くんがタヌキの姿のままノートをとり、給食のパンをほおばり、休み時間には誰よりも速く山を駆け回る姿を見るうちに、いつしか「ま、土居くんだし、いっか!」と笑って受け入れるようになりました。
「化けの皮」を、文字通り脱ぎ捨てて、ありのままの自分で過ごす土居くん。
そんな彼の「正直さ」が、学校中の大人たちの隠し事まで暴き出し、物語は予想もしない愉快なフィナーレへ……!
正直さが愛おしい、土居くんのくれる勇気
この本の「惹きつけポイント」は2つあります。
一つめは、「化ける」のをやめて「自分」に戻るということ。
このお話の土居くんは、ある日突然タヌキになったわけではありません。ずっと隠していた「本来の姿」をさらけ出した、そのあまりに真っ直ぐな正直さが、私たちの心をくすぐり、笑顔にさせてくれます。
恥ずかしがることもなく、堂々とありのままを差し出した土居くんの姿に、なんだか不思議な勇気をもらえるような気がしませんか。
そして二つめは、「違っていて、あたりまえ」が日常になるということ。
最初は目を丸くして驚いたクラスメイトたちも、次第に「タヌキが机に座っている光景」を、ごく自然なものとして受け入れていきます。

それは、誰かが無理に配慮し続けることではなく、「みんな違って当たり前」という感覚が、いつの間にか日常になっている状態です。
お互いのありのままを認め合うことで、誰もが自分らしくいられる心地よい居場所が育まれていくのです。
大人になると、私たちはいつの間にか、本来の自分とは違う「仮面」をかぶり、懸命に社会という舞台を歩いているのかもしれません。
そんなふうに、少し疲れを感じている背中を、タヌキの土居くんはふわりと押してくれます。
彼がタヌキの姿をさらけ出したように、私たちも自分を縛っていたものから解き放たれ、本来の姿で呼吸する勇気を、そっと手渡してもらえるはずです。
にこっとポイント
- 本来の姿を表したタヌキの土居くんの姿は、自分らしく生きる勇気を私たちに与えてくれます。
- 「もし自分だったら、どんな姿が『正直な姿』かな?」と、読み終わった後にお子様と対話するきっかけにもりますよ。
- 「絵本」と「本」の間に、子どもが自分で読める本としてもおすすめです。
(にこっと絵本 Haru)









