今回ご紹介する絵本は、こちら『火の山にすむゴリラ』です。まずは表紙をご覧くださいね。
『火の山にすむゴリラ』前川貴行写真・文、新日本出版社、2022 amazon
ゴリラと、目が合いませんでしたか?
ゴリラのあたたかな表情にも惹かれるのですが、明るく穏やかで、まるで何かを語りかけてくるような目が、やはり強く印象に残ります。
絵本の中には、「黒く巨大な塊」であるゴリラがたくさんいて、そのゴリラがポツンとしているように見えるほど、広大なアフリカのジャングルが広がっています。
ゴリラたちは、子どもも大人も表情豊か。食べる、遊ぶ、育てる― どの瞬間も、息遣いが感じられそうなほど、存在感のある写真が撮られています。
絵本の著者・前川貴行さんは、ただ野生のゴリラに会いたい一心で、行ったことのないアフリカに旅立ったそうです。そして、一瞬にしてゴリラに魅了され、その後4年間ゴリラを追い続けることになりました。
そうするうちに、
ただ、間近に接しながら放っておいてもらえる。
ゴリラたちと、そんな関係になった前川さん。子どものゴリラにちょっかいを出されたり、すぐそばをゴリラが通ったり、はたまたゴリラに腕をつかまれ「警告」されたり。すごい……!
だからこそ、なのでしょうが、文章は、ゴリラの生態を伝えつつも、あくまで前川さん目線。その臨場感が、とても魅力的です。
山の上にはゴリラがいて、
裾野から平野にかけては人間が暮らしている。
ゴリラも人も、そして自然も、すべてがひと続きであること― 絶滅が心配されるゴリラに対して、人として戒めを感じながらも、普段つい忘れがちな自然の一部としての自分を取り戻せるような気がしました。
9月24日は「世界ゴリラの日」。この絵本を読みつつ、ゴリラや自然に思いを馳せてみてください。きっと、「大きい」「力が強い」「賢い」だけではないゴリラの魅力を、たくさん発見できるはずです!
にこっとポイント
- アフリカのマウンテンゴリラを追った写真絵本です。あたたかで迫力のあるゴリラたちの魅力がたっぷりと伝わってきます。
- 少しお疲れのときに、自然のエネルギーをたっぷり浴びることができます。
- 絶滅危惧種や戦争の動物への影響を、子どもたちに伝えたいときにもおすすめです。
(にこっと絵本 高橋真生)