PICK UP! 空のきれいな季節に……「飛ぶ」絵本

むかしむかし、とらとねこが、まだ山の中で暮らしていたころのお話です。

むかしむかしとらとねこは
『むかしむかしとらとねこは……』大島英太郎文・絵、福音館書店、2009 amazon

その頃のとらは、とてものろまで、獲物を捕るのが下手でした。ほかの動物たちにも怖がられるどころか、からかわれるくらいです。

でも、ねこはすばしこくて、とらよりずっと体が小さいのに、獲物を捕るのがとても上手。

そこでとらは、ねこに頼み込んで、弟子入りすることにしました。一生懸命なとらに、親切でかしこいねこの、秘密の特訓が始まります。

教わったのは、音をたてずに獲物に近づく方法、速く走る方法、高いところから飛び降りる方法。そうして獲物を上手にとれるようになったとらを、ねこはねぎらいました。

「さあ、とらさん。これで、わたしの しっている わざは すべて あなたに おしえましたよ。さいごまで よく がんばりましたね」

そんなねこにとらは、感謝を示し、こう言うのです。

「ところで ねこさん。おれは さいごに もうひとつだけ ぜひ しりたいことが あるのさ」

とらの知りたいこととは? 衝撃の一言が続きます。

子どもと読むと「えー!」と声が上がる、大どんでん返し

『むかしむかしとらとねこは……』は、中国の昔話を絵本にしたものです。

最後に短く解説がついていますが、「トラとネコの生態をよく知っている」人々によって生み出されたリアリティのあるストーリーがとても魅力的です。

子どものおはなし会などで読むと、ハッとする結末に

「本当はそういう人(とらですが)だったの?」
「いつからそんなこと考えてたの?」
「作戦だったの?」
「まあ、そうかなと思ったよー!」

などと、大騒ぎになることもあります。とらもねこも問い詰めたくなってしまうのですよね。

絵は、あたたかく深い色合いでどっしりしているのに、愛嬌たっぷり。目の動きや手(前足)のちょっとした位置や角度の違いで、キャラクターや心情が伝わってきます。

また、とらもねこも、2本足で立ち、ゆるやかに着物を着ているのですが、体を低くして静かに歩いたり軽やかに飛んだりするところは、獲物を捕る動物のいきいきとした迫力があります。そのギャップもおもしろい!

比較的大きめの絵本で、はっきりした絵なので、大人数への読み聞かせにもおすすめです。本のたてよこが入れ替わるところもあって、最後まで飽きさせません。年長さんから小学校高学年、高齢者と、幅広い世代に喜ばれる絵本です。

にこっとポイント

  • 中国の昔話を絵本にしたものです。トラとネコの生態のよくわかるストーリーがおもしろく、あたたみと愛らしさのある絵が魅力的な絵本です。
  • おはなし会にもおすすめで、年長さんから小学校高学年、高齢者と、幅広い世代に喜ばれます。

(にこっと絵本 高橋真生)

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