たいくつ、ってすごいことばだと思うのです。
たいくつたいくつたいくつ……と、ひらがなで書くとなんだか眠たくなるような「たいくつ感」があるし、退屈退屈退屈……と漢字で書くと、もうやめて! と言いたくなる迫りくる「退屈感」があります。たいくつ、退屈、ああ、退屈……。
『ああ、たいくつだ!』に描かれるのは、そんな「たいくつ」を持て余した2人の男の子。ハイカットのスニーカーの紐もほどけ気味に、大あくびです。
『ああ、たいくつだ!』ピーター・スピアーさく、松川真弓やく、評論社 1989 amazon
「なにか、しなさいよ! たいくつだなんて、なにいってるの!」
お母さんに外に出されてしまった兄弟は、年の頃、12歳というところでしょうか。
なんとなーく、敷地内にある巨大納屋に行って「なんかつくる?」。
偶然見つけたこれまた巨大なプロペラから火がつき、あるものを作ることになりました。
本できっちり調べて、ベビーカーから車輪を、垣根から材木を、車からエンジンを、と材料を山ほどくすねて…… できあがったのは何でしょうか?
あまりひとくくりにしてはいけないのでしょうが、男の子特有の「何をしでかすかわからない」感じ、ってありますよね。そして、「しでかす」ときの爆破的なパワーと集中力。
私も、小3男子と暮らす今、その力を別の場面で有効活用してほしいと思う日々ですが、とてもまねできないと感服してしまうこともあります。
『ああ、たいくつだ!』は、そんな姿が、セリフを中心にテンポよく描かれていて、読みやすく、楽しい絵本です。
何よりワクワクするのは、細かく描かれた絵。広げた設計図、いろいろなエンジン、納屋に置かれた数々の道具に、床に散らばったコンセントや釘の一本一本まで、思わずじーっと見てしまいます。赤ちゃんや飼っている犬も、とてもいい表情です。
さて、お仕置きとたっぷりの愛情を受け取って、片付けを済ませた2人は部屋に戻ると……?
なんと、またしても「あーあ、たいくつだなあ!」。
……思わず、笑ってしまいますが、子ども部屋は魅力的なものであふれかえっていて、また「次」があるんだろうなあという空気に満ちています。
楽しみに(そして、大人としてはご両親にちょっぴり同情)しつつ、本を閉じるのでした。
お子さんの「今、やってみたい!」に答えるなら?
『ああ、たいくつだ!』を読んで、「すごーい!」「いいなあ」と目をキラキラさせた小さな子、次に出てくるのは、そう「(自分も)やる!」です。絵本の男の子たちのように、「調べて」作ってみたいと言われることがあるかもしれません。
もし「待ったなし!」という状況で、手元にちょうどいい図鑑や工作の本がなかったら、また図書館や書店に行くのが難しかったら、Google の画像検索やPinterest(ピンタレスト)が便利です(ただし、Pinterestは、ログインしないとほとんど見られないので、アカウントが必要です)。
英語で検索すると海外のものも見ることができますし、細かい作り方がわからなくても、なんとなく想像できるものがたくさんあります。いい刺激になりますよ。
思いもよらない大作が飛び出してきて、兄弟の両親のように、にっこりしてしまうかもしれませんね。
にこっとポイント
- よくある男の子たちの退屈と、そこから生まれた驚くべき大作のギャップが愉快な絵本です。
- ユーモアと明るい色遣い、広がる空と野原に、気持ちが晴れ晴れ、元気になります。
- 大人の男の人にもファンの多い絵本なので、プレゼントにもおすすめです。
(にこっと絵本 高橋真生)