水族館の大きな水槽の中を泳ぐイワシの群れ― 光を受けてきらめいたかと思えば、次の瞬間には影となり、自在に形を変えながら泳ぎ続けるその美しさに、思わず見とれてしまう人も多いでしょう。
しかし、その優雅な動きの裏には「群れで生きなければ、生き残れない」という厳しい現実が隠れています。

『イワシ むれでいきるさかな』大片忠明作、福音館書店、2019 amazon
イワシは生まれたときから仲間と集まり、大きな群れで海を泳ぎます。
鳥や魚、クジラ、人間に狙われても、群れの数の力で一部は生き残ります。生き残った仲間は合流し、またたくさんの卵を産んで命をつないでいきます。

本書では、群れが形を変えて泳ぐ理由や、天敵から身を守る行動などが、美しい絵とともに静かに、しかし子どもにもわかることばで丁寧に力強く語られます。
群れの動きを圧倒的な迫力で描き出しているのが大きな魅力。見開きいっぱいに広がる絵は、まるで巨大な水槽をのぞき込んでいるかのようです。
群れが渦を巻き、形を変えながら回遊する様子や、口を開けて泳ぐイワシの顔のアップには、思わず息をのむ迫力があります。
イワシが群れで回遊し、数が減れば別の群れと合体して、また新しい群れをつくる、そのくり返しも、視覚的にわかります。

イワシの群れの動きと生命感をたっぷり感じることができる絵本です。
なお、イワシは節分と縁のある魚ですから、その時季に読むのもおすすめです。「柊鰯(ひいらぎいわし)」は、イワシを柊の枝にさして飾り、焼いたイワシの強いにおいや煙、柊の鋭いトゲで鬼を追い払う風習です。
また、栄養豊富なイワシを食べて、無病息災を願う地域もあります。
にこっとポイント
- 迫力ある絵と構図で、イワシの群れの動きと生命感をたっぷり感じることができます。イワシが群れで生きる理由を通して、自然界の厳しさと命の知恵を考えさせてくれます。
- 2025年度大学入学共通テストの国語の問題に、本書と、当時の担当編集者のインタビューが取り上げられていたことで話題になりました。
(にこっと絵本 Haru)









