PICK UP! ウマの絵本

午年の2026年にむけてご紹介するのは、こちらの絵本、『北の馬と南の馬』です。

北の馬と南の馬

『北の馬と南の馬』前川貴行写真・文、あかね書房、2011 amazon

雪の中にスッと立つ白い馬。空気は冷たいはずなのに、あたたかさを感じさせるのは、その目の優しさのためでしょうか。

『北の馬と南の馬』は、宮崎県都井岬の御崎馬(みさきうま)と、青森県・尻屋崎の寒立馬(かんだちめ)― 日本の北と南で暮らす野生馬を追った、写真絵本です。

この絵本で最も印象に残るのは、やはり馬たちの圧倒的な存在感でしょう。

御崎馬も寒立馬も、西洋馬よりも一回り小ぶりで、体高は130㎝程度です。

というのも、御崎馬は在来馬で、寒立馬の祖先も平安時代から東北地方に生息していた南部馬(今は、外国の馬と掛け合わされている)だから。

春、夏、秋、冬と、変わり続ける自然の中で生きる馬たちは、のびのびとして、たくましく、そして美しく見えます。

写真集ではなく、写真絵本だからこそより伝わる「生きる喜び」

その姿を見ているだけで、なんとも言えず穏やかな気持ちになるのですが、文章を読むと、また新たな驚きがあります。

日本の北と南、2000キロも離れている土地に住む御崎馬と寒立馬。当然ですが、環境も、食べものも、何もかも違うのです。

また、御崎馬は国の、寒立馬は青森県の天然記念物に指定されているものの、共に絶滅の心配があるため、人間に手厚く保護されているのですが、その様子もよくわかります。

さらに、出産(繁殖)については、命の誕生とその成長が丁寧に綴られています。子馬がすばらしく愛らしいこともあり、まるで生きることを寿いでいるかのように感じられました。

この絵本が、写真集ではなく、絵本である意味はここにあると思います。

それでは、皆さまの新しい1年が、この絵本のように喜びに満ちたものでありますように。来年もよろしくお願いいたします。

にこっとポイント

  • 宮崎県の御崎馬と青森県の寒立馬を追った、写真絵本です。
  • 写真は美しく、文章は丁寧に書かれていて、新鮮な驚きと穏やかさのある絵本です。馬に会いに行きたくなります。

(にこっと絵本 高橋真生)

おすすめの記事