山あいの静かな村に、「あずきがゆ」を炊くのが大好きなおばあさんがいました。
おばあさんが煮るあずきがゆはとってもおいしかったので、おばあさんは「あずきがゆばあさん」と呼ばれていました。

『あずきがゆばあさんととら』パク・ユンギュ著、ペク・ヒナ絵、かみやにじ訳、偕成社、2022 amazon
ある晩、とてつもなくでっかいとらが、「ばあさんを がぶっと くってやろう」と迫ってきました。

ばあさんは、冬至の日に「おいしいあずきがゆをたらふく食べてからわたしをがぶっとくったらいい」と機転をきかせて追い返しますが、いよいよ冬至になると、とらに食われる運命を前に涙が止まりません。
けれども、「ぴょんぴょん とことこ」「のそのそ ぺたぺた」「ぬるぬる ぺたぺた」次々と助っ人が現れて、ばあさんを助けてくれます。
巻末の「訳者あとがき」によると、この昔話は、韓国の小学校の教科書にも掲載されている、あちらではとても親しまれた物語なのだそうです。
助っ人のキャラクターは違えど、日本の昔話「さるかに合戦」で見られる展開にどこか通じるものがあり、読んでいると自然と親しみがわいてきます。
さらに、本作は、2020年アストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞作家で、韓国を代表する絵本作家ペク・ヒナが絵を手がけています。
彼女の作品は、人形を使った立体的な表現が中心で、登場するキャラクターたちの豊かな表情が魅力です。
この絵本でも、そのユーモラスな造形に、ページをめくるたびに思わず微笑んでしまいます。

あずきがゆばあさんのおおらかさ、ペク・ヒナと昔話ならではのユーモアがしっかりと詰まった1冊です。
冬至に読みたい、韓国のあずきがゆ昔話
寒くなってくると、ほくほくとあたたかなものを食べたくなりますよね。そんな冬至を控えた時期に読みたいのが、こちらの1冊です。
というのも、日本では冬至の日にゆず湯に入ったり、かぼちゃを食べる風習がありますが、韓国では「あずきがゆ」を食べる習慣があるからです。
きっと、木べらを持つおばあさんの隣に座り、手間と時間をかけて煮るあずきがゆの温かな湯気に包まれて、心までぽかぽかとほどけていくような気持ちになるはずです。
にこっとポイント
- あずきがゆを中心として展開していく昔話です。ぐつぐつと煮込まれた温かなあずきがゆと、おおらかなあずきがゆばあさんたちを見ながら、ほこほこと温かな気持ちで楽しむことができます。
- 韓国を代表する絵本作家ペク・ヒナが絵を手がけています。ユーモラスで表情豊かな登場人物たちの姿に自然と引き込まれます。
(にこっと絵本 Haru)









