子どもが「わーっ」と泣いている姿を見ると、うらやましくなることがあります。
『おなみだぽいぽい』ごとうみづき作、ミシマ社、2017 amazon
悲しみや悔しさを、あれほど素直に吐き出せたら、どんなにすっきりするだろう……。
私の場合は、大人のもろもろの諸事情により、歳と共に感情を表に出すことがなかなか難しくなって、映画や本で感動の涙を流せたとしても、こころの奥底からわき上がるような塊のようなアツいものを、子どものように外に出すことができなくなりました。
「じゅぎょうのとき せんせいのいうことわからなくて なみだこぼれそうなときあります」
悲しみに暮れるネズミは「なきました おなかのおくに ある かたまり ふつふつ ぜんぶ なみだに なるように」。
悲しみの理由に違いはあれど、どうして私の悲しみまでお見通しなのだろう?― と錯覚を覚えてしまうほど、こころにグッとくる文章が魅力的な1冊です。
「私」以外誰も立ち入れない場所で渦巻いている感情の出し方を、この本は教えてくれるように思います。
悲しみの中に、ユーモアがあるところがまたいい! ユーモアと一緒にダーッと駆け抜け、感情が昇華していく感じがなんとも心地いいんです。
この本は、読み聞かせするというよりは一人でページをめくる本かもしれません。
素直になるのって、簡単じゃないときがあります。そんなときに、この絵本を開いてほしい。涙も鼻水も、大洪水になればいい。その後は、きっと晴れ間が見えることでしょう。
にこっとポイント
- お子さまにというよりは、大人が自分のために読む作品としておすすめします。
(にこっと絵本 森實摩利子)