「待つ」ということは、時に忍耐が必要です。
そして、「きっと大丈夫だろう」と相手を信頼できるかどうかも、関わってくるものです。
『はやくはやくっていわないで』― この作品を読むと、普段、自分が誰かと接しているときに、相手のことをちゃんと見て、ちゃんと感じられているかどうかを、問われている気がします。
『はやくはやくっていわないで』益田ミリ作、平澤一平絵、ミシマ社、2010 amazon
その相手は、小さい子どもだったり、友人だったり、職場の仲間だったり、親やきょうだいだったり……。
きこえていますか? この子の声、あの人の声、わたしの声…… 「どうしていそぐ」 「いそいでどこいく」「ひっぱらないで」 「おさないで」。
帯にあることばです。
一人一人が違っているのは当たり前のことなのに、私たちはすぐにこの大切なことを忘れてしまう。日常生活では、歩調を合わせることの方が、優先されてしまいがちです。
これもちろん大切なことですが、そこにある誰かの窮屈な気持ちを、忘れてはいけないと思うのです。
あなたの目の前にいる大切な誰かを思って、ぜひ読んでもらいたい作品です。
にこっとポイント
- 「待つ」ことについて、あなたの目の前にいる大切な誰かを思って、読んでもらいたい作品です。
- 作者の益田ミリさんが、どうしてこの作品を書いたのかが、ミシマ社のHPに掲載されています。こちらもぜひ読んでください。→ 『はやくはやくっていわないで』「著者より本書刊行によせて」
(にこっと絵本 森實摩利子)