カロリーヌとゆかいな8匹の仲間たちは、石切場に来ています。
『カロリーヌとなぞのいし』ピエール・プロブスト作、やましたはるお訳、B L出版、1999 amazon
何百年も前の生き物たちに想いを馳せながら、化石探しをしていると、なんとねこの化石を発見!
この大発見が博物館で発表されると、議論が交わされたり、罵り合い殴り合いまではじまったりと、世間は大騒ぎになります。さて、この騒動の結末は?
カロリーヌたちと一緒に、大昔のロマンに想いを馳せて……
本当に何百年も昔にねこがいたの!?
そんな、にわかには信じがたいトピックに、世間は大きく揺るがされます。
本当にそうなの? いいや、そんなわけはない!
博物館に集まった人たちは喧々諤々、議論は白熱し、果てには殴り合いにまで発展する始末。
その真実はどうであれ、「大昔に本当にねこはいたのか」というそのひとつの波紋から、たくさんの人が興味を持って、遺物の宝庫「博物館」に足を運んだことは、太古のロマンに想いを馳せる、よい結果につながったといえるでしょう。
何百年もかけて層になった石の壁の中から、大昔に生きていた動物や植物が姿を現すなんて、小さい子どもたちにはなかなか理解できないロマンかもしれません。
それでも、ゆかいな仲間たちと一緒に、この絵本を通してそのロマンの一端に触れられたら― 子どもたちの興味の幅も、さらに広がっていくかもしれませんね。
「カロリーヌとゆかいな8ひき」シリーズの魅力
『カロリーヌとなぞのいし』は、「カロリーヌとゆかいな8ひき」のうちの1冊。私がお伝えしたい、カロリーヌシリーズの魅力は大きく分けて2つあります。
まず1つ目は、個性豊かな仲間たちです。リーダーはたまたお母さんのようにゆかいな8匹の動物たちを率いるのが、フランスの女の子・カロリーヌです。
そして8匹の動物― しろくろボビー、らいおんキッド、くろねこノワロー、しろねこプフ、こげちゃのユピー、くまのブム、ひょうのピトー、まっくろピポ― がにぎやかに物語を盛り上げます。
この仲間たちの表情の豊かさが、何よりも秀逸なのです。
機嫌を悪そうにしかめた顔や、少し驚いた顔、おどけたような顔……毛並み豊かな動物たちの顔に人間のような感情がのせられて見事に描かれているので、ついついこの仲間たちのお茶目さに引き込まれてしまうのです。
そして2つ目は、シリーズ絵本であること。シリーズの利点は、さまざまな場所や季節のストーリー、多岐にわたるテーマを、個性豊かな仲間たちと一緒に何冊にも渡って経験していけること。カロリーヌシリーズは、なんと35冊にも及びます。
図書館に行くと、私の娘も、カロリーヌの絵本があるコーナーにまず向かい、「まだ読んでないのどれかなー」と夢中になって絵本を探しています。
次は仲間たちと、どんな冒険ができるんだろう?
シリーズものに「ハマる」と、ワクワクしながら絵本に触れる楽しさを知ることができるでしょう。お子さんの読書習慣のきっかけにもなるはずです。
にこっとポイント
- 個性豊かな8匹とカロリーヌのドタバタ劇を通して、仲間たちとともに地層や化石への興味も高まります。道端の石に、昔の生き物に、と興味を広げていくきっかけにもなるはずです。自由研究や、博物館への一歩に、夏に向けてお子さんと楽しんでみるのもよいですね。
- 漫画がお好きな方は、ひょうの「ピトー」、こげちゃの「ユピー」、しろねこ「プフ」の名前を聞いて何かピンとくる方もいるかもしれません。実は、集英社出版の『HUNTER×HUNTER』という漫画に登場するキャラクターの名前に、3匹の名前が共通している部分があるのです。漫画好きとしては思いがけないところでの一致に、なんだか嬉しくなるのです。
(にこっと絵本 Haru)