立派なたてがみと、遠くまで届く勇ましい声を持ったライオンが主人公のお話です。
『空とぶライオン』佐野洋子作・絵、講談社、1993 amazon
ライオンは、ねことは親戚だったので、一緒に暮らしていました。ライオンにあこがれたのでしょうか― ねこ達は、ライオンの元へ毎日集まってきます。
そうすると、ライオンは何かごちそうしたくなって、獲物を捕りに出かけ、ねこ達にふるまうのでした。
「さすがライオンだ!」ねこ達は言います。
毎日毎日、やってくるねこ。毎日毎日、ごちそうをふるまうライオン。初めはうれしかったはずの賞賛が、だんだんとライオンを苦しめていきました。
「ぼくのしゅみは、ひるねでね」
ライオンのことばは、ねこ達には届きません。それどころか、都合のいい状況にすっかりと胡坐をかいてしまったねこ達……。
ライオンは、期待に応えようとしますが、ある日、ついに力尽きて石になってしまったのでした。その後、ライオンは、金色の石のまま、何十年も何百年も、ずっと望んでいた昼寝を続けるのでした。
石になって眠っているライオンを起こしたのは、「きっと、つかれたんだ」という子ねこの一言。その言葉を聞いてライオンは目覚め、空へと駆け上がっていったのでした。
褒められたり認められたりするのは、うれしいもの。それはパワーになり、いつもより頑張れちゃったりもします。
けれど、そればかりになると、ライオンのように疲れて果ててしまう。あなたには、そんな経験はありませんか?
誰かのために頑張ることはステキなことです。が、自分を大切にすることも忘れないで。自分を大切にできるのは、結局は自分なのですから。
にこっとポイント
- 期待に応えようと頑張りすぎてしまったライオンの物語です。
- 明るい色、暗い色、心情を表す色の力を感じてほしい。変わっていくねこの表情からも、いろんな感情が読み取れますよ。
(にこっと絵本 森實摩利子)