『ほんやねこ』石川えりこ、講談社、2021 amazon
遠くに海の見える街に、立派な本屋さんがあります。中には、天井どころか、2階の天井にまで届くような書棚。はしごやらせん階段で、本を手に取ることができるようです。
面置き(表紙を見せる置き方)している書棚には、『にんぎょひめ』『ピノキオ』『あおいとり』『3びこのこぶた』…… その他、たくさんのお馴染みの童話の絵本が並べられています。
ある日、ほんやねこは早仕舞いをして、いつものように散歩に出かけることにしました。でも、その時にうっかり窓を閉め忘れてしまったのです。
ほんやねこが出かけた後に、強い風が店内に吹き込み、書棚の絵本がバラバラパラパラとめくられました。
そして、物語に登場する人たちを外へ連れ出してしまったのです!
そうとは知らないほんやねこは、のんびりと散歩を続け、お気に入りの野原で疲れた身体をほぐしたり毛繕いをしたり……。
大変なことが起きているのに、リラックスしたほんやねこの表情が愉快です。
さて、風に飛ばされたピノキオ、長靴をはいた猫、シンデレラ、チルチルミチル、ラプンツェル、3びきのこぶた、おおかみなどは、みんなで力を合わせてピンチを切り抜け、ほんやねこの背中に乗って無事に本屋へ、そして絵本の中へ戻ることができました。
途中でハラハラする場面もありますよ。久しぶりにワクワクする絵本に出会いました。
にこっとポイント
- ほんやねこのねこらしさと本の楽しさがつまった、ワクワクする絵本です。
- ここに出てくる面置きされた絵本(童話)は有名なものばかりですが、内容(原作)を知っていると面白さが倍増すると思います。
- 石川えりこさんは、村中李衣先生と『こくん』(童心社)という絵本も出版されています。それがこの絵本の中にも登場している…… ような気がします。ぜひ、探してみて下さい。
(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)