保育士を目指す学生さんのリクエストから始まった、絵本専門士で保育者養成校の講師でもある、鴫原晶子さんの「しぎさんの絵本教室」。今回は、絵本の学びを深める手立てとなる、学生のうちに読んでおきたい本・雑誌をご紹介します。
なぜ、絵本について学ぶのか
これまで、さまざまな記事で、「絵本は大人が子どもに読んであげるもの」「子どもが初めて出会う芸術」ということを述べてきました。
このことを踏まえて、今回は、絵本について学ぶことについて述べたいと思います。
まず、保育者は保育のプロですから、子どものことはもちろん、その知識と技術を、日毎に、あるいは年々重ねていくわけです。
つまり、保育者として成長し、保護者の方の色々な質問や相談に答えられるようになっていく、ということです。
質問は多岐に渡りますが、絵本に関する質問には、たとえば、
- 「2歳の男の子にはどんな絵本がいいのでしょうか?」
- 「知り合いに子どもが生まれたので、絵本をお祝いとして贈りたいのだが、どんな絵本がいいですか?」
などがあります。
これらには、保育者は可能なかぎり即答することが望ましいのです。
「保育所保育指針」や「幼稚園教育要領」など(特に領域「言葉」)に、「絵本に親しみ……」といった文言が書かれていますし、質問した方は「このまま本屋さんへ行って絵本を買いたい!」と思っておられるかもしれないからです。
すべての質問に即答というのは難しいかもしれませんが、「絵本のことなら任せて!」という保育者が大勢いてほしいと願います。
ですから、学生のうちに、ぜひ、絵本の学びを深めていただきたいと思います。
1. 『保育と絵本』
『保育と絵本』瀧薫著、エイデル出版、2018 amazon
「幼稚園教育要領」や「保育所保育指針」にそって、月齢・年齢・月別に優れた絵本がカラーで取り上げられています。著者の瀧薫さんは、保育園の園長先生です。保育者必携の一冊だと思います。
2.『ベーシック絵本入門』
『ベーシック絵本入門』生田美秋・石井光恵・藤本朝巳編著、ミネルヴァ書房、2013 amazon
絵本の教科書と言っていい文献です。絵本の歴史・絵本の部位の解説をはじめ、絵本について様々な角度からわかりやすくアプローチされています。また、後半部には国内外の優れた絵本の紹介があり、これも参考になります。
3. 『心に緑の種をまく』
『心に緑の種をまく 絵本のたのしみ』渡辺茂男著、岩波現代文庫、2016 amazon
『のろまなローラー』『しょうぼうじどうしゃ じぷた』でお馴染みの渡辺茂男先生の自伝的な一冊です。アメリカで児童図書館員をなさっていた時のお話や、息子さんたちにたくさんの絵本を読んだ時のお話、有名な国内外の児童文学者との交流などがわかりやすく、楽しく書かれています。
4.『えほんのせかい こどものせかい』
『えほんのせかい こどものせかい』松岡享子著、文春文庫、2017 amazon
2022年1月に亡くなった、児童文学者・松岡享子先生の著作です。アメリカで学ばれ児童図書館で働かれた経験をもとに、優れた絵本の紹介と読み方のヒントが示されています。
絵本の読み方は本来自由ではありますが、ちょっとしたひと手間を加えることで、絵本そのものがよりイキイキとしてきます。大切な子どもたちのためにもぜひ読んでいただきたい一冊です。
5. 雑誌
絵本を探しに書店に赴いた時は、
- 「この本読んで!」(一般社団法人出版文化産業振興財団、季刊)
- 「月刊モエ(MOE)」(白泉社、月刊)
などの雑誌にも目を向けることをお勧めします。雑誌ですから、特集等が、ご自身の好みのあったものだけ購入することもできます。
(寄稿: 絵本専門士<東京都> 鴫原晶子 / 保育者養成校講師)