3びきのかわいい「こぶた」ならぬ「オオカミ」たちが、悪いおおブタと攻防を繰り広げる!? 有名な昔話を立場逆転、現代風にアレンジした新しい物語。
『3びきのかわいいオオカミ』ユージーン・トリビザス文、ヘレン・オクセンバリー絵、こだまともこ訳、冨山房、1994 amazon
あるところに、ふわふわの毛皮にふさふさのしっぽを持った3びきのかわいいオオカミがいました。兄弟は、お母さんのうちを出て家を作ります。
れんがの家を建てたオオカミ達のもとにやってきたのは、「わるいおおブタ」。そこから彼らの激しい攻防が始まりますが― 最後にはその凄まじさも忘れるような、ハッピーエンドが待っています。
大笑い! エキセントリックな敵役おおブタに注目
もうお分かりかと思いますが、この絵本は、「3びきのこぶた」を元ネタにしたパロディです。「こぶた」と「オオカミ」の立場が逆転しているその設定にまず興味をひかれますが、ここで強烈なのが敵役のおおブタなんです。
これが、本当に……「わるい」!
オオカミ達が建てたレンガの家を吹き飛ばせないとわかると、ハンマーを持ち出してきて、ドカーン。思いきりハンマーを振り抜くコミカルな姿がなんとも痛快で、大人も子どもも思わず笑ってしまいます。
次のコンクリートの家だって、なんと電気ドリルでガガガガガ! と豪快に破壊してしまうのです。
どんどん過激になっていくわるいおおブタから、きっと誰もが目が離せなくなるはずです!
意固地になるばかりではなく、時に優しさを持てたら
このお話、愉快痛快な物語ですが、読んでいるとなんだか人間関係にも通じてくるように感じます。
わるいおおブタの出現に怖がって家に逃げ込むオオカミ達と、家に入れてくれないからとその家を破壊するおおブタ。強度を増しセキュリティも完備した要塞のようになっていくオオカミ達の家に比例するように、おおブタの破壊行動も過激さを増していきます。
これってなんだか、お互いに意固地になればなるほどこじれていく人間関係のようですよね。
相手に対して優しい気持ちを持てたら、相手を信じることができたら、ハッピーな生活に少しでも近づけるかもしれない― そう振り返るきっかけに、この絵本を手にとってみるのもよいかもしれません。
にこっとポイント
- 元ネタ「3びきのこぶた」を知っているからこそ、さらに楽しめるパロディ絵本です。童話に親しみ始めた子どもから大人まで、幅広く楽しめます。
- 人間関係を少し振り返りたくなったとき、優しい気持ちを持つきっかけになるかもしれません。
- 「3びきのこぶた」のパロディ絵本では、他にも『3びきのぶたたち』(デーヴィッド・ウィーズナー作・絵、江國香織訳、BL出版、2002)もあります。作中に、マザーグースやおとぎ話の世界が登場します。
(にこっと絵本 Haru)