『ふしぎふしぎ』片山令子作、長新太絵、国土社、1997 amazon
本当に久しぶりに晴れた、気持ちのいい朝のこと。
ミチコが思わず「ああ、おいしいひかり」と言うと、そんならもっともっとあげようと、まぶしい手がのびてきて、おいしいひかりをくれました。ふしぎふしぎ!
おいしいひかりの入ったびんを持ってミチコは散歩に出かけます。道々、きつねやうさぎに出会って、おいしいひかりをわけっこするのですが……。
うまくいかないときに思い出したい、「おいしいひかり」のこと
ミチコが動物たちに出会うたび、子どもたちはニンマリしたりドキドキしたり。自分やお友だちのことを思い出してしまうようです。
だって、きつねはいきなりミチコに足をかけて転ばせたり、うさぎは悲しみのあまりににんじんを食べ過ぎたりするんです。しかも、大きなくまは、ものすごいいばりんぼう!
でも、大丈夫、おいしいひかりが、みんなを元気にしてくれます。
「いらいらしたら おいしいひかり かなしいときも おいしいひかり」
毎日生きていたら、いいことばかりじゃない。もしかしたら、悲しいことやつらいことばかりのことがあるかもしれない。
そんなときにこの絵本を開くと、おいしいひかりの黄色が、ぱあっと目の前を明るくしてくれます。のどかな丘に、ミチコたちの姿もはずむよう。
わが家でこの絵本を読んだとき、年中さんだった息子は、お友だちとけんかをしてしまったときなど、胸のあたりでとびらを開け(るふりをし)て、心のコップをきれいに洗い、おいしいひかりを注いでいましたよ。
さあ、ミチコに誘われるまま、「むこうのそらをみて、めをつむって いっぱいいきをすってみて」― おいしいひかりは、きっとあなたにも届くはず。
にこっとポイント
- ストーリーも絵もあたたかく、読むと、明るい気持ちになれる絵本です。お疲れ気味の方への贈りものにもおすすめ。
- 「はんぶんこと ぜんぶと、どっちがおおい?」の名回答には、子どもも大人も、ふわっと笑顔になってしまいます。
(にこっと絵本 高橋真生)